民法

【重要判例】不倫関係にある女性に対する包括遺贈 - 本妻 vs 愛人 遺産をめぐる女同士の争い

1. 事件の概要

亡Dは死亡する約1年2か月前に遺言を作成した。

遺言の内容は、妻である上告人A1子である上告人A2不倫相手である被上告人に全遺産の3分の1ずつを遺贈するというものであった。

不倫相手に遺産の3分の1を遺贈するというものが、公序良俗に反して違法なものであるのかが問題となった。

2. 争点/論点

・本件において、不倫相手に全遺産の3分の1を遺贈するという遺言は、公序良俗に反し無効となるのか。

3. 条文

条文

民法
(公序良俗)

第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

4. 最高裁判決

 上告代理人下光軍二、同佐藤公輝の上告理由第一について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、その判断の過程に所論の違法はない。論旨は、ひっきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

 同第二、第三について
 原審が適法に確定した、
(1) 亡D妻である上告人A1がいたにもかかわらず、被上告人と遅くとも昭和44年ごろから死亡時まで約7年間いわば半同棲のような形で不倫な関係を継続したものであるが、この間昭和46年1月ころ一時関係を清算しようとする動きがあったものの、間もなく両者の関係は復活し、その後も継続して交際した、
(2) 被上告人との関係は早期の時点で亡Dの家族に公然となっており、他方亡D上告人A1間の夫婦関係は昭和40年ころからすでに別々に生活する等その交流は希薄となり、夫婦としての実体はある程度喪失していた、
(3)本件遺言は、死亡約1年2か月前に作成されたが、遺言の作成前後において両者の親密度が特段増減したという事情もない、
(4) 本件遺言の内容は、妻である上告人A1子である上告人A2及び被上告人全遺産の3分の1ずつを遺贈するものであり、当時の民法上の妻の法定相続分は3分の1であり、上告人A2がすでに嫁いで高校の講師等をしている

など原判示の事実関係のもとにおいては、本件遺言は不倫な関係の維持継続を目的とするものではなく、もっぱら生計を亡Dに頼っていた被上告人生活を保全するためにされたものというべきであり、また、右遺言の内容が相続人らの生活の基盤を脅かすものとはいえないとして、本件遺言が民法90条に違反し無効であると解すべきではないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

 よって、民訴法401条、95条、89条、93条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

・妻子のある男性がいわば半同棲の関係にある女性に対し遺産の3分の1を包括遺贈した場合であっても、右遺贈が、妻との婚姻の実体をある程度失った状態のもとで右の関係が約6年間継続したのちに、不倫な関係の維持継続を目的とせず、専ら同女の生活を保全するためにされたものであり、当該遺言において相続人である妻子も遺産の各3分の1を取得するものとされていて、右遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなど判示の事情があるときは、右遺贈は公序良俗に反するものとはいえない。


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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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