刑法

【重要判例】危険運転致死傷の幇助罪 - 飲酒運転の黙認は罪になるのか?

1. 事件の概要

被告人Aおよび被告人Bは、職場の後輩であるCとともに飲酒をし、その後、酩酊状態のCが運転する車に同乗し、Cは死亡事故を起こした。

被告人Aおよび被告人Bは、同乗する際にCが運転することに了解を示し、Cが運転中もこれを黙認し続けていた。

本件において被告人Aおよび被告人Bに過失運転致死傷のほう助罪が成立するのかが問題となった。

2. 争点/論点

・本件において、被告人らに危険運転致死傷のほう助罪が成立するのか。

3. 条文

条文

刑法
ほう助)
第62条
 正犯をほう助した者は、従犯とする。

4. 最高裁決定

被告人Aの弁護人岩本憲武の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であり、被告人Bの弁護人松山馨の上告趣意のうち、憲法31条、38条2項違反をいう点は、記録を調べても、自白の任意性を疑うに足りる証跡は認められないから、前提を欠き、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。

なお、所論に鑑み、被告人両名に対する危険運転致死傷幇助罪の成否について、職権で判断する。

原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば、本件の事実関係は、次のとおりである。
(1) 被告人A(当時45歳)及び被告人B(当時43歳)は、運送会社に勤務する同僚運転手であり、同社に勤務する(当時32歳)とは、仕事の指導等をする先輩の関係にあるのみならず、職場内の遊び仲間でもあった。

(2) 被告人両名は、平成20年2月17日午後1時30分頃から同日午後6時20分頃までの間、飲食店でCらと共に飲酒をしたところ、が高度に酩酊した様子をその場で認識したばかりでなく、更に飲酒をするため、別の場所に向かってスポーツカータイプの普通乗用自動車(以下「本件車両」という。)で疾走する様子を後から追う車内から見て、「あんなに飛ばして大丈夫かな」などと話し、の運転を心配するほどであった。

(3) 被告人両名は、目的の店に到着後、同店駐車場に駐車中の本件車両に乗り込んで、と共に同店の開店を待つうち、同日午後7時10分前後頃、から、「まだ時間あるんですよね。一回りしてきましょうか」などと、開店までの待ち時間に、本件車両に被告人両名を同乗させて付近の道路を走行させることの了解を求められた折、被告人Aが、顔をに向けて頷くなどし、被告人Bが、「そうしようか」などと答え、それぞれ了解を与えた。

(4) これを受けて、は、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で、上記駐車場から本件車両を発進させてこれを走行させ、これにより、同日午後7時25分頃、埼玉県熊谷市内の道路において、本件車両を時速100ないし120㎞で走行させて対向車線に進出させ、対向車2台に順次衝突させて、その乗員のうち2名を死亡させ、4名に傷害を負わせる本件事故を起こした。被告人両名は、その間、先に了解を与えた際の態度を変えず、の運転を制止することなく本件車両に同乗し、これを黙認し続けていた。

所論は、被告人両名がCによる本件車両の運転を了解し、その走行を黙認しただけでは被告人両名に危険運転致死傷幇助罪は成立しないという。

そこで検討するに、刑法62条1項従犯とは、他人の犯罪に加功する意思をもって、有形、無形の方法によりこれを幇助し、他人の犯罪を容易ならしむるものである(最高裁昭和24年(れ)第1506号同年10月1日第二小法廷判決・刑集3巻10号1629頁参照)ところ、前記1のとおりの被告人両名との関係、被告人両名に本件車両発進につき了解を求めるに至った経緯及び状況、これに対する被告人両名の応答態度等に照らせば、が本件車両を運転するについては、先輩であり、同乗している被告人両名意向を確認し、了解を得られたことが重要な契機となっている一方、被告人両名は、がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識しながら、本件車両発進に了解を与え、そのの運転を制止することなくそのまま本件車両に同乗してこれを黙認し続けたと認められるのであるから、上記の被告人両名了解とこれに続く黙認という行為が、運転の意思をより強固なものにすることにより危険運転致死傷罪を容易にしたことは明らかであって、被告人両名危険運転致死傷幇助罪が成立するというべきである。 これと同旨の原判断は相当である。

よって、刑訴法414条、386条1項3号、181条1項ただし書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

刑法62条1項の従犯とは、他人の犯罪に加功する意思をもって、有形、無形の方法によりこれを幇助し、他人の犯罪を容易ならしむるものである


この記事が良いと思ったら以下のリンクからサイト運営費用の寄付をお願いします。

LegaLabへ寄付する

  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

-刑法
-,