行政法

【重要判例】個室付浴場開業阻止事件 - 行政権の濫用!?

1. 事件の概要

個室付公衆浴場を営業する被告会社は、浴場個室において異性の客に接触する役務を提供する(トルコぶろ)営業を行っていたところ、当該浴場施設から134.5メートル離れた場所に児童遊園施設があるため、その営業が規制された。

しかし、児童遊園施設の主な設置目的が、被告会社トルコぶろ営業の規制であったため、児童遊園施設の設置処分の適法性・有効性が問題となった。

2. 争点/論点

・本件における児童遊園設置認可処分が適法・有効なものであるのか。

3. 条文

条文

児童福祉法
第7条 この法律で、児童福祉施設とは、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設及び児童家庭支援センターとする。

第40条 児童厚生施設は、児童遊園、児童館等児童に健全な遊びを与えて、その健康を増進し、又は情操をゆたかにすることを目的とする施設とする

4. 最高裁判決

  弁護人安達十郎の上告趣意は、憲法22条、29条、31条違反をいう点もあるが、実質はすべて単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由にあたらない。

  しかしながら、所論にかんがみ職権により調査すると、原判決及び第一審判決は、次の理由により破棄を免れない。

 (一) 原判決の是認する第一審判決の認定事実の要旨は、「個室付公衆浴場の営業を営む被告会社は、浴場施設から134.5メートル離れた地域にa町立b児童遊園(児童福祉法7条に規定する児童福祉施設で、被告会社に対する山形県知事の公衆浴場経営許可の日よりも51日前に同知事の認可を受けていた。)があるため、浴場個室において異性の客に接触する役務を提供する営業(いわゆるトルコぶろ営業)ができないのに、昭和43年8月16日ころから同44年2月7日ころまでの間に女性従業員5名(いわゆるトルコ嬢)による男性客相手(延70名)のトルコぶろ営業を営んだ」というものである。

 (二) 本件の争点は、山形県知事のb児童遊園設置認可処分(以下「本件認可処分」という。)の適法性有効性にある。すなわち、風俗営業等取締法は、学校、児童福祉施設などの特定施設と個室付浴場業(いわゆるトルコぶろ営業)の一定区域内における併存を例外なく全面的に禁止しているわけではない(同法4条の4第3項参照)ので、被告会社のトルコぶろ営業に先立つ本件認可処分行政権の濫用に相当する違法性を帯びているときにはb児童遊園の存在被告会社トルコぶろ営業を規制する根拠にすることは許されないことになるからである。

 (三) ところで、原判決は、a町が山形県の関係部局、同県警察本部と協議し、その示唆を受けて被告会社トルコぶろ営業の規制をさしあたっての主たる動機、目的として本件認可の申請をしたこと及び山形県知事もその経緯を知りつつ本件認可処分をしたことを認定しながら、b児童遊園を認可施設にする必要性、緊急性の有無については具体的な判断を示すことなく、公共の福祉による営業の自由の制限に依拠して本件認可処分の適法性、有効性を肯定している。また、記録を精査しても、本件当時a町において、被告会社のトルコぶろ営業の規制以外に、b児童遊園を無認可施設から認可施設に整備する必要性、緊急性があったことをうかがわせる事情は認められない。

 本来、児童遊園は、児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、情操をゆたかにすることを目的とする施設(児童福祉法40条参照)なのであるから、児童遊園設置の認可申請、同認可処分もその趣旨に沿ってなされるべきものであって、前記のような、被告会社トルコぶろ営業の規制を主たる動機、目的とするa町のb児童遊園設置の認可申請を容れた本件認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり被告会社のトルコぶろ営業に対しこれを規制しうる効力を有しないといわざるをえない(なお、本件認可処分の適法性、有効性が争点となっていた被告会社対山形県間の仙台高等裁判所昭和47年(行コ)第3号損害賠償請求控訴事件において被告会社のトルコぶろ営業に対する関係においての本件認可処分の違法・無効を認めた控訴審判決が、最高裁判所昭和49年(行ツ)第92号の上告棄却判決(本件認可処分は行政権の著しい濫用によるものとして違法であるとした。)により確定していることは、当裁判所に顕著である。)。

  そうだとすれば、被告会社の本件トルコぶろ営業については、これを規制しうる児童福祉法7条に規定する児童福祉施設の存在についての証明を欠くことになり、被告会社に無罪の言渡をすべきものである。したがって、原判決及び第一審判決は、犯罪構成要件に関連する行政処分の法的評価を誤って被告会社を有罪としたものにほかならず、右の違法は判決に影響を及ぼすもので、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。

 よって、刑訴法411条1号により原判決及び第一審判決を破棄し、同法413条但書、414条、404条、336条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

・個室付浴場業(いわゆるトルコぶろ営業)の規制を主たる動機、目的とする知事の児童遊園設置認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、個室付浴場業を規制しうる効力を有しない。


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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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