行政法

【重要判例】自動車一斉検問事件 - 交通取締のための検問は適法なのか。

1. 事件の概要

警察官が飲酒運転など交通関係違反の取締を主な目的とし、飲食店の多い区域から来る車両すべてに対し走行上の外観等の不審の有無にかかわりなく赤色燈を回して合図して停止を求めるという方法で検問を実施したところ、酒気帯び運転で被告人を含む5人を検挙した。

被告人は、本件自動車検問は何ら法的根拠もなくなされた違法なもので、本件証拠のうち、右の検問が端緒となって収集された証拠は、証拠能力がない旨を主張した。

2. 争点/論点

・警察官により、道路を通行する車両すべてに対し走行上の外観等の不審の有無にかかわりなく赤色燈を回して合図して停止を求めるという方法で行う検問は違法であるのか。

3. 条文

条文

警察法
(警察の責務)

第2条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責務とする。

4. 最高裁判決

 被告人本人の上告趣意のうち、憲法違反をいう点は、原審において主張、判断を経ていないものであり、また、判例違反をいう点は、引用の判例は事案を異にし本件に適切でなく、その余は、事実誤認、単なる法令違反の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由にあたらない。

 なお、所論にかんがみ職権によって本件自動車検問の適否について判断する。警察法2条1項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといって無制限に許されるべきものでないことも同条2項及び警察官職務執行法1条などの趣旨にかんがみ明らかである。

しかしながら、自動車の運転者は、公道において自動車を利用することを許されていることに伴う当然の負担として、合理的に必要な限度で行われる交通の取締に協力すべきものであること、その他現時における交通違反、交通事故の状況などをも考慮すると、警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。原判決の是認する第一審判決の認定事実によると、本件自動車検問は、右に述べた範囲を越えない方法と態様によって実施されており、これを適法であるとした原判断は正当である。

 よって、刑訴法414条、386条1項3号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法である。


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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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