行政法

【重要判例】工業地域の指定と抗告訴訟の対象

1. 事件の概要

岩手県知事が都市計画法の規定に基づき、岩手県内のある地区を工業地域に指定することを決定した。

同地区内で、既に精神病院を経営し、将来病院の拡張を予定していた者が、当該地域が工業地域に指定されたことで、病院の建築や増改築が出来なくなることを危惧し、用途地域の指定の手続きに瑕疵があったことを理由に本件用途地域の指定の無効確認訴訟を提起した

■(参考)用途地域について

2. 争点/論点

・工業地域の決定が抗告訴訟の対象となる処分にあたるのか。

3. 条文

条文

都市計画法
(地域地区)

第8条1項 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。
1号 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)

4. 最高裁判決

都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され(建築基準法48条7項、52条1項3号、53条1項2号等)、これらの基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから(同法6条4項、5項)、右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない

もっとも、右のような法状態の変動に伴い将来における土地の利用計画が事実上制約されたり、地価や土地環境に影響が生ずる等の事態の発生も予想されるが、これらの事由は未だ右の結論を左右するに足りるものではない。なお、右地域内の土地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害されているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地域指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解されるから、前記のような解釈をとっても格別の不都合は生じないというべきである。

 右の次第で、本件工業地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる処分にはあたらないと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は正当であって、原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立って右判断の不当をいうもので、採用することができない。

 よって、行政事件訴訟法7条、民訴法401条、95条、89条、93条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

都市計画法8条1項1号の規定に基づく工業地域指定の決定は、抗告訴訟の対象とならない。
⇒ただし、この判決には批判が多い。


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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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