行政法

【重要判例】浜松市土地区画整理事業計画決定取消請求事件

1. 事件の概要

静岡県浜松市は、鉄道の高架化と併せて駅周辺の公共施設の整備改善等を図るため、土地区画整理事業を計画

同市は、静岡県知事に対し土地区画整理事業の事業計画において定める設計の概要について認可を申請し、同知事からその認可を受け、同日その公告をしたところ、本件土地区画整理事業の施行地区内に土地を所有している者(被告人ら)が、本件土地区画整理事業は公共施設の整備改善及び宅地の利用増進という法所定の事業目的を欠くものであるなどと主張して、本件事業計画の決定の取消しを求めた

土地区画整理事業とは

2. 争点/論点

・土地区画整理事業の事業計画が、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当するのかが問題となった。

3. 条文

条文

行政事件訴訟法
(抗告訴訟)

第3条
1項 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2項 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

4. 最高裁判決

上告代理人渡辺昭、同松浦基之の上告受理申立て理由第1、第3、第4について

本件は、被上告人の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定について、施行地区内に土地を所有している上告人らが、同決定の違法を主張して、その取消しを求めている事案である。

原審の確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
(1) 被上告人は、新浜松駅から西鹿島駅までを結ぶ遠州鉄道鉄道線(西鹿島線)の連続立体交差事業の一環として、上島駅の高架化と併せて同駅周辺の公共施設の整備改善等を図るため、西遠広域都市計画事業上島駅周辺土地区画整理事業(以下「本件土地区画整理事業」という。)を計画し、平成15年11月7日、土地区画整理法(平成17年法律第34号による改正前のもの。以下「法」という。)52条1項の規定に基づき、静岡県知事に対し、本件土地区画整理事業の事業計画において定める設計の概要について認可を申請し、同月17日、同知事からその認可を受けた。

被上告人は、同月25日、同項の規定により、本件土地区画整理事業の事業計画の決定(以下「本件事業計画の決定」という。)をし、同日、その公告がされた。

(2) 上告人らは、本件土地区画整理事業の施行地区内に土地を所有している者であり、本件土地区画整理事業は公共施設の整備改善及び宅地の利用増進という法所定の事業目的を欠くものであるなどと主張して、本件事業計画の決定の取消しを求めている。

原審は、要旨次のとおり判断し、本件訴えを却下すべきものとした。
土地区画整理事業の事業計画は、当該土地区画整理事業の基礎的事項を一般的、抽象的に決定するものであって、いわば当該土地区画整理事業の青写真としての性質を有するにすぎず、これによって利害関係者の権利にどのような変動を及ぼすかが必ずしも具体的に確定されているわけではない。事業計画が公告されることによって生ずる建築制限等は、法が特に付与した公告に伴う付随的効果にとどまるものであって、事業計画の決定ないし公告そのものの効果として発生する権利制限とはいえない。事業計画の決定は、それが公告された段階においても抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないから本件事業計画の決定の取消しを求める本件訴えは、不適法な訴えである

しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1)ア 市町村は、土地区画整理事業を施行しようとする場合においては、施行規程及び事業計画を定めなければならず(法52条1項)、事業計画が定められた場合においては、市町村長は、遅滞なく、施行者の名称、事業施行期間、施行地区その他国土交通省令で定める事項を公告しなければならない(法55条9項)

そして、この公告がされると、換地処分の公告がある日まで、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくはたい積を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならず(法76条1項)、これに違反した者がある場合には、都道府県知事は、当該違反者又はその承継者に対し、当該土地の原状回復等を命ずることができ(同条4項)、この命令に違反した者に対しては刑罰が科される(法140条)。このほか、施行地区内の宅地についての所有権以外の権利で登記のないものを有し又は有することとなった者は、書面をもってその権利の種類及び内容を施行者に申告しなければならず(法85条1項)施行者は、その申告がない限り、これを存しないものとみなして、仮換地の指定や換地処分等をすることができることとされている(同条5項)

また、土地区画整理事業の事業計画は、施行地区(施行地区を工区に分ける場合には施行地区及び工区)、設計の概要事業施行期間及び資金計画という当該土地区画整理事業の基礎的事項を一般的に定めるものであるが(法54条、6条1項)、事業計画において定める設計の概要については、設計説明書及び設計図を作成して定めなければならず、このうち、設計説明書には、事業施行後における施行地区内の宅地の地積(保留地の予定地積を除く。)の合計の事業施行前における施行地区内の宅地の地積の合計に対する割合が記載され(これにより、施行地区全体でどの程度の減歩がされるのかが分かる。)、設計図(縮尺1200分の1以上のもの)には、事業施行後における施行地区内の公共施設等の位置及び形状が、事業施行により新設され又は変更される部分と既設のもので変更されない部分とに区別して表示されることから(平成17年国土交通省令第102号による改正前の土地区画整理法施行規則6条)、事業計画が決定されると、当該土地区画整理事業の施行によって施行地区内の宅地所有者等の権利にいかなる影響が及ぶかについて、一定の限度で具体的に予測することが可能になるのである。そして、土地区画整理事業の事業計画については、いったんその決定がされると、特段の事情のない限り、その事業計画に定められたところに従って具体的な事業がそのまま進められ、その後の手続として、施行地区内の宅地について換地処分が当然に行われることになる前記の建築行為等の制限は、このような事業計画の決定に基づく具体的な事業の施行の障害となるおそれのある事態が生ずることを防ぐために法的強制力を伴って設けられているのであり、しかも、施行地区内の宅地所有者等は、換地処分の公告がある日まで、その制限を継続的に課され続けるのである。

そうすると、施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。

もとより、換地処分を受けた宅地所有者等やその前に仮換地の指定を受けた宅地所有者等は、当該換地処分等を対象として取消訴訟を提起することができるが、換地処分等がされた段階では、実際上、既に工事等も進ちょくし、換地計画も具体的に定められるなどしており、その時点で事業計画の違法を理由として当該換地処分等を取り消した場合には、事業全体に著しい混乱をもたらすことになりかねない。それゆえ、換地処分等の取消訴訟において、宅地所有者等が事業計画の違法を主張し、その主張が認められたとしても、当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして事情判決(行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度あるのであり、換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い。そうすると、事業計画の適否が争われる場合、実効的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性があるというべきである。

(2) 以上によれば、市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ、実効的な権利救済を図るという観点から見ても、これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。したがって、上記事業計画の決定は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である。

これと異なる趣旨をいう最高裁昭和37年(オ)第122号同41年2月23日大法廷判決・民集20巻2号271頁及び最高裁平成3年(行ツ)第208号同4年10月6日第三小法廷判決・裁判集民事166号41頁は、いずれも変更すべきである。

以上のとおりであるから、本件訴えを不適法な訴えとして却下すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。旨は理由があり、原判決のうち被上告人に関する部分は破棄を免れない。そして、同部分につき、第1審判決を取り消し、本件を第1審に差し戻すべきである。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官藤田宙靖、同泉徳治、同今井功、同近藤崇晴の各補足意見、裁判官涌井紀夫の意見がある。

補足意見

■裁判官藤田宙靖の補足意見は、次のとおりである。
私は、多数意見に賛成するものであるが、土地区画整理事業計画決定に処分性を認める理論的根拠につき、涌井裁判官からの意見があることに鑑み、私の考えるところを補足しておくこととしたい。

当裁判所判例が従来採用してきた「処分」概念の定義に忠実に従う限り、土地区画整理事業計画決定に処分性を認める根拠は、まずもって、事業計画決定が公告されることによって生ずる建築行為等の制限等の法律上の効果(昭和41年大法廷判決では「付随的効果」に過ぎないとされた効果)に求められることにならざるを得ないのは、涌井裁判官の指摘されるとおりである。しかし、涌井裁判官の意見のように、この論拠のみで必要かつ十分であるとする場合には、当然のことながら、同じく私人の権利を直接に制限する法的効果を伴う他の計画決定行為(例えば都市計画法上の地域・地区の指定等、いわゆる「完結型」の土地利用計画)についてどう考えるのかが、直ちに問題とならざるを得ない。この点に関してはおそらく、まずは従来の当裁判所判例に従い、これらの土地利用計画は一種の立法類似の行為としての性格を持つものとして、土地区画整理事業計画決定とは区別され、行政処分とは認められない、とすることが考えられよう。そして、それはそれなりに、一つの可能な考え方であるとは思われるが、ただ、従来の判例が前提としてきた、完結型の土地利用計画は「不特定多数の者を対象とした一般的、抽象的規制である」という性格付け自体が、果たして(少なくとも)すべての場合に納得し得るようなものであるか否かについては、なお問題が残らないではない。例えばまず、規制の内容自体から言えば、完結型土地利用計画は、まさに「完結型」なのであって、私人の権利への侵害は、(土地区画整理事業計画決定に伴う建築行為等の制限の場合と同様、あるいは見方によってはより一層)直接的かつ究極的な(暫定的規制に止まらない)ものである。また、対象となる地域についても、規制区域の範囲はかなり限定的なものとなるケースも無いではない。こうしてみると、今回、昭和41年大法廷判決を変更するとして、そこから直ちにこれらの土地利用計画決定についての従来の判例を云々する必要までは無いものとしても、将来においてはこういった問題も新たに登場して来る余地があることを想定しておいた方が、賢明であるように思われるのである。このように考える場合には、同様に私人の権利義務に対し直接の法的効果をもたらす各種の計画行為の中で、他を差し置いても土地区画整理事業計画決定については処分性を認めなければならない固有の理由は何かを問うことには、十分な意味があるものといわなければならない。

私自身は、土地利用計画と異なる土地区画整理事業計画決定の固有の問題は、本来、換地制度をその中核的骨格とするこの制度の特有性からして、私人の救済の実効性を保障するためには事業計画決定の段階で出訴することを認めざるを得ないというところにあるものと考える。すなわち、土地区画整理事業計画の場合には、純粋に理論的には、計画の適法性を、後続の換地処分等個別的処分の取消訴訟においてその前提問題として争うことも可能であるとは言い得るものの、多数意見も指摘するとおり、換地制度という権利交換システムをその骨格とする制度の性質上、実際問題としては、この段階で計画の違法性を理由に個別的処分の取消しないし無効確認を認めることになれば、事業全体に著しい混乱をもたらすこととなりかねない。それ故、換地処分の取消訴訟においては、仮に処分ないしその前提としての計画の違法性が認められても、結果としては事情判決をせざるを得ないという状況が、容易に生じ得る。このような事態を避け実効的な権利救済を図るためには、事業プロセスのより早い段階で出訴を認めることが合理的であり、かつ不可欠である、ということができる(同様のことは、同じく権利交換システムないし権利変換システムを骨格とする土地改良事業、第一種市街地再開発事業等についても言える。)。これに対して、完結型土地利用計画の場合には、例えば各種用途地域において例外許可が認められることもあるように、仮に個別的開発行為や建築確認等の段階でその許可等の拒否処分が争われ、その前提問題として計画自体の違法性が認定され取消判決がなされたとしても、そのことが直ちに、システムの全体に著しい混乱をもたらすということにはならない(少なくとも、裁判所が事情判決をせざるを得ないといった状況が広く生じるものとは考えられない。)。

一般的に言って、行政計画については、一度それが策定された後に個々の利害関係者が個別的な訴訟によってその取消しを求めるというような権利救済システムには、そもそも制度の性質上多少とも無理が伴うものと言わざるを得ないのであって、立法政策的見地からは、決定前の事前手続における関係者の参加システムを充全なものとし、その上で、一度決まったことについては、原則として一切の訴訟を認めないという制度を構築することが必要というべきである。問題はしかし、現行法上、このような構想を前提とした上での計画の事前手続の整備がなされてはいないというところにあり、こういった事態を前提として、司法が、その本来の責務に照らしてどのような法解釈を行うのが最も合理的であるかが問われることになる。そしてその場合、問題のパーフェクトな解決は、立法技術の上でも必ずしも容易な問題であるとは言えないのであるから(このことは、問題提起は早くからなされているにも拘らず、今日に至るまで、この種の立法が実現していないという事実に、既に表われている。)、現段階において、司法がこの問題についての幅広い解決方法を示すことは、必ずしも適当であるとは言えまい。このような前提の下で、行政訴訟における国民の権利救済の実効性を図るという課題に鑑みるとき、当裁判所として今行うべきことは、事案の実態に即し、行政計画についても、少なくとも必要最小限度の実効的な司法的救済の道を、(立法を待たずとも)判例上開くということであろう。そして、上記に見たような意味において、土地区画整理事業計画決定に対する抗告訴訟の道を開くことは、まさにその典型例であると思われるのである。

もとより、涌井裁判官も指摘されるように、換地の法的効果自体は、土地区画整理事業計画決定から直接に生じるものではないが、一度計画が決定されれば、制度の構造上、極めて高い蓋然性をもって換地処分にまで到ることは否定し得ないのみならず、まさに、その段階に到るまでの現実の障害の発生を防止することを目的とする(いわば計画実施保障制限とも称すべき)建築行為等の制限効果が直接に生じることとなっている。そして、この制限は換地処分の公告がなされるまで継続的に課されるのであって、この意味において、事業計画決定は、土地区画整理事業の全プロセスの中において、いわば、換地にまで到る権利制限の連鎖の発端を成す行為であるということができる。多数意見が「施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべき」であるというのは、まさにこの意味であって、冒頭に見た従来の判例における「処分」概念との整合性についても、このように理解されるべきである。

■裁判官泉徳治の補足意見は、次のとおりである。
私は、多数意見に同調するものであるが、土地区画整理事業の事業計画の決定が処分性を有する理由について、私の考えるところを補足しておくこととする。

本件土地区画整理事業は、都市計画法12条2項の規定により土地区画整理事業について都市計画に定められた施行区域の土地についての土地区画整理事業であるから、都市計画事業である(法3条の4第1項(平成15年法律第100号による改正前の土地区画整理法3条の5第1項)、法2条8項)。

都市計画法4条15項は、「この法律において『都市計画事業』とは、この法律で定めるところにより第五十九条の規定による認可又は承認を受けて行なわれる都市計画施設の整備に関する事業及び市街地開発事業をいう。」と規定し、同法4条7項は、「この法律において『市街地開発事業』とは、第12条第1項各号に掲げる事業をいう。」と規定し、同法12条1項は、市街地開発事業として、「土地区画整理法による土地区画整理事業」、「都市再開発法による市街地再開発事業」などを掲げている。

都市計画事業は、公権力の行使である公用収用又は公用換地の手法によって、その法的実現が担保されている。

すなわち、法律に特別な規定があるものを除き、都市計画事業は、土地収用法3条各号の一に規定する事業に該当するものとみなされ、同法の規定が適用されるものとし(都市計画法69条)、法的実現の担保として土地収用法による公用収用の手法が採用されている。

土地収用法においては、同法20条の規定による事業の認定があり、同法26条1項の規定による事業の認定の告示があると、起業者に対して、同法の定める手続を履践することによって最終的には認定に係る起業地内の土地を収用し、又は使用し得る地位が付与される(同法39条1項)。起業地内の土地は、事業の認定の告示により、特段の事情のない限り、収用又は使用されることになる。なお、告示された事業の認定は、行政不服審査法による不服申立ての対象とされている(土地収用法130条1項)。

そして、都市計画事業については、土地収用法20条の規定による事業の認定は行わず、都市計画法59条の規定による都市計画事業の認可をもってこれに代えるものとされている(同法70条1項)(ここでは、同法59条3項の規定による承認については触れないこととする。)。上記の認可を申請するには事業計画を記載した書面を提出しなければならず、事業計画には収用又は使用の別を明らかにした事業地を定めなければならない(同法60条1項、2項)。また、同法62条1項の規定による都市計画事業の認可の告示をもって、土地収用法26条1項の規定による事業の認定の告示とみなすこととされている(都市計画法70条1項)。その結果、都市計画事業の認可の告示があると、施行者に対して、事業地内の土地を収用し、又は使用し得る地位が付与され、事業地内の土地は、都市計画事業の認可の告示により、特段の事情のない限り、収用又は使用されることになる。

他方、都市計画事業として施行する土地区画整理事業については、法3条の4第2項が、都市計画法60条から74条までの規定を適用しないと規定し、公用収用の手法を採用しないことを明らかにしている。そして、法は、公用収用に代わる法的実現の担保として、最終的には換地処分に至る公用換地の手法を規定しているのである。

ところで、最高裁昭和63年(行ツ)第170号平成4年11月26日第一小法廷判決・民集46巻8号2658頁(以下「平成4年判決」という。)は、都市再開発法51条1項、54条1項の規定に基づき市町村により定められ公告された第二種市街地再開発事業の事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分であると判示している。

市街地再開発事業の施行区域内において施行される第二種市街地再開発事業は、都市計画事業であり、土地収用法3条各号の一に規定する事業に該当するものとみなされ、同法の規定が適用される(都市再開発法6条1項、都市計画法69条)。
市町村は、第二種市街地再開発事業を施行しようとするときは、事業計画において定める設計の概要について都道府県知事の認可を受けて事業計画を決定し、これを公告しなければならないが、この認可が都市計画法59条の規定による都市計画事業の認可とみなされ、この認可及び公告により、市町村は、都市計画事業としての第二種市街地再開発事業の施行権を取得する(都市再開発法51条、54条)。
また、上記の認可及び公告は、土地収用法20条の規定による事業の認定及び同法26条1項の規定による事業の認定の告示とみなされ、市町村は、これにより施行地区の土地に対し土地収用法による収用権限を取得する(都市再開発法6条4項、都市再開発法施行令1条の5、都市計画法70条1項)。

したがって、第二種市街地再開発事業の事業計画の決定及び公告により、施行地区内の土地の所有者等は、特段の事情のない限り、自己の所有地等が収用されるべき地位に立たされることになる。平成4年判決は、このことを理由として、「公告された再開発事業計画の決定は、施行地区内の土地の所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものであって、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる」と判示したのである。

また、最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁(以下「平成17年判決」という。)は、都市計画施設の整備に関する事業に係る都市計画法59条の規定による都市計画事業の認可について、それが抗告訴訟の対象となる行政処分に当たることを当然の前提として、その取消訴訟に係る周辺住民の原告適格について判示している。

都市計画法59条の規定による都市計画事業の認可及び同法62条1項の規定による都市計画事業の認可の告示により、事業地内の土地に権利を有する者は、土地収用法により当該土地が収用又は使用されるべき地位に立たされることになるから、告示された都市計画事業の認可が抗告訴訟の対象となることは明らかである。

そこで、土地区画整理事業における事業計画の決定の法的性質について考えるに、法52条1項は、市町村が都市計画事業として土地区画整理事業を施行しようとする場合においては、事業計画において定める設計の概要について都道府県知事の認可を受けて、事業計画を定めなければならないと規定し、同条2項は、この認可をもって都市計画法59条に規定する都市計画事業の認可とみなすとしている。また、法55条9項は、市町村が上記事業計画を定めた場合においては、市町村長はこれを公告しなければならないと規定し、同条11項は、この公告があるまでは、市町村は事業計画をもって第三者に対抗することができないと規定している。すなわち、市町村は、事業計画の決定の公告により、都市計画事業として、事業計画に定める内容の土地区画整理事業を施行する権限を取得して、これを第三者に対抗することができ、以後、建築行為等の制限、仮換地の指定、建築物等の移転・除却及び工事等を経て、最終的に換地処分に至る強制処分により、土地区画整理事業を実施することになる。他方、施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定の公告により、特段の事情のない限り、自己の所有地等につき換地処分を受けるべき地位に立たされることになるのである。

このように、土地区画整理事業の事業計画の決定は、そこにおいて定められる設計の概要についての認可が都市計画法59条に規定する都市計画事業の認可とみなされるのであり、その公告により施行者に法的強制力をもった事業の施行権が付与されるという点において、平成4年判決の第二種市街地再開発事業の事業計画の決定や、平成17年判決の都市計画施設の整備に関する事業に係る都市計画事業の認可、ひいては土地収用法20条の規定による事業の認定と同じ性質を有するものである。法的実現を担保する手法が、土地区画整理事業にあっては公用換地であるのに対し、第二種市街地再開発事業等にあっては公用収用であるという違いがあるにすぎないのである。

以上のように、土地区画整理事業の事業計画の決定及び公告の本質的効果は、都市計画事業としての土地区画整理事業の施行権の付与にある。法76条1項の規定による建築行為等の制限は、事業計画の決定及び公告そのものの効果として発生する権利制限ではなく、事業の円滑な施行を図るため法律が特に付与した公告に伴う付随的な効果にとどまるというべきである。土地区画整理事業の施行権の付与の効果及び建築行為等の制限の効果は、いずれも公告された事業計画の決定が抗告訴訟の対象となることを理由付けるものと考えるが、公告された事業計画の決定が抗告訴訟の対象となることの本来的な理由は、それが土地区画整理事業の施行権の付与という効果を有し、それにより施行地区内の宅地所有者等が特段の事情のない限り自己の所有地等につき換地処分を受けるべき地位に立たされるということにあるのである。

■裁判官近藤崇晴の補足意見は、次のとおりである。
本判決は、当裁判所のこれまでの判例を変更して、土地区画整理事業の事業計画の決定にいわゆる処分性を認めるものであり、これに関連して検討すべき理論上及び実務上の問題が幾つかある。私は、多数意見に同調するものであるが、その立場から問題の所在を指摘し、一応の私見を述べておくこととしたい。
公定力と違法性の承継
(1) ある行政行為について処分性を肯定するということは、その行政行為がいわゆる公定力を有するものであるとすることをも意味する。すなわち、正当な権限を有する機関によって取り消されるまでは、その行政処分は、適法であるとの推定を受け、処分の相手方はもちろん、第三者も他の国家機関もその効力を否定することができないのである。

そして、このことがいわゆる違法性の承継の有無を左右することになる。すなわち、先行する行政行為があり、これを前提として後行の行政処分がされた場合には、後行行為の取消訴訟において先行行為の違法を理由とすることができるかどうかが問題となるが、一般に、先行行為が公定力を有するものでないときはこれが許されるのに対し、先行行為が公定力を有する行政処分であるときは、その公定力が排除されない限り、原則として、先行行為の違法性は後行行為に承継されず、これが許されないと解されている(例外的に違法性の承継が認められるのは、先行の行政処分と後行の行政処分が連続した一連の手続を構成し一定の法律効果の発生を目指しているような場合である。)。

(2) したがって、土地区画整理事業の事業計画の決定についてその処分性を否定していた本判決前の判例の下にあっては、仮換地の指定や換地処分の取消訴訟において、これらの処分の違法事由として事業計画の決定の違法を主張することが許されると解されていた。これに対し、本判決のようにその処分性を肯定する場合には、先行行為たる事業計画の決定には公定力があるから、たとえこれに違法性があったとしても、それ自体の取消訴訟などによって公定力が排除されない限り、その違法性は後行行為たる仮換地の指定や換地処分に承継されず(例外的に違法性の承継を認めるべき場合には当たらない。)、もはや後行処分の取消事由として先行処分たる事業計画の決定の違法を主張することは許されないと解すべきことになろう。

そうすると、事業計画の決定の処分性を肯定する結果、その違法を主張する者は、その段階でその取消訴訟を提起しておかなければ、後の仮換地や換地の段階ではもはや事業計画自体の適否は争えないことになる。しかし、土地区画整理事業のように、その事業計画に定められたところに従って、具体的な事業が段階を踏んでそのまま進められる手続については、むしろ、事業計画の適否に関する争いは早期の段階で決着させ、後の段階になってからさかのぼってこれを争うことは許さないとすることの方に合理性があると考えられるのである。

出訴期間と経過措置的解釈
(1) 土地区画整理事業の事業計画の決定に処分性を認めるならば、抗告訴訟としてその取消しを求める訴訟を提起することが許されるが(行政事件訴訟法3条2項)、この取消訴訟には出訴期間の定めがあり、処分があったことを知った日(公告があった日に事業計画の決定を知ったことになる。)から6か月を経過したときは提起することができず、ただし、正当な理由があるときはこの限りでないこととされている(同法14条1項)。出訴期間が経過した場合には、事業計画の決定は形式的に確定し、いわゆる不可争力を生ずることになる。

(2) 本判決の後にされる事業計画の決定については、出訴期間について特段の問題を生じないのであるが、本判決より前にされた事業計画の決定で、既に6か月の出訴期間を経過し、あるいはこれが切迫しているものについては、別途の配慮を要するであろう。本判決によって変更された従前の判例の下においては、国民は、土地区画整理事業の事業計画の決定に処分性は認められないと判断して、通常はその段階では取消訴訟を提起しなかったであろうと考えられるからである。

この点に配慮するならば、本判決より前にされた事業計画の決定については、6か月の経過について上記の「正当な理由」があるものとして救済を図るといういわば経過措置的な解釈をすることが相当であろう。ただし、換地処分がされてその取消訴訟の出訴期間も経過しているような場合には、「正当な理由」があるとはいえないであろう。

取消判決の第三者効(対世効)と第三者の手続保障
(1) 土地区画整理事業の事業計画の決定に処分性を認める場合に、事業計画の決定を取り消す判決が確定すると、取消判決の形成力によって、当該事業計画決定はさかのぼって効力を失う。そして、この判決は第三者に対しても効力を有する(行政事件訴訟法32条1項)。いわゆる取消判決の第三者効(対世効)である。

土地区画整理事業の事業計画の決定は、特定の個人に向けられたものではなく、不特定多数の者を対象とするいわゆる一般処分であるが、このような一般処分を取り消す判決の第三者効については、相対的効力説(原告との関係における当該処分の相対的効力のみを第三者との関係でも失わせるものであるとする見解)と絶対的効力説(第三者との関係をも含む当該処分の絶対的効力を失わせるものであるとする見解)の対立がある。詳論は避けることとするが、私は、行政上の法律関係については、一般に画一的規律が要請され、原告とそれ以外の者との間で異なった取扱いをすると行政上不要な混乱を招くことなどから、絶対的効力説が至当であると考えている。

(2) 事業計画の決定を取り消す判決の第三者効によって、訴訟の当事者ではない関係者で、当該事業計画決定の適法・有効を主張する者は、不利益を被ることになるから、このような利害関係人が自己のために主張・立証をする機会を保障する必要がある。上記の絶対的効力説を採ったときは、特にその必要性が高い。

このような第三者の手続保障としては、まず、「訴訟の結果により権利を害される第三者」の訴訟参加がある(行政事件訴訟法22条)。例えば、土地区画整理事業の施行地区内の宅地所有者等で、当該事業計画決定は適法・有効であるとして事業の進行を望む者は、裁判所の決定をもって訴訟参加をし、被告の共同訴訟的補助参加人として訴訟行為を行うことができるものと考えたい。さらに、そうだとすれば、自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかった第三者は、第三者の再審の訴えを提起することができることになろう(同法34条)。したがって、第三者の手続保障に欠けるところはないというべきである。

裁判官今井功は、裁判官近藤崇晴の補足意見のうち1(公定力と違法性の承継)及び2(出訴期間と経過措置的解釈)に同調する。

意見

■裁判官涌井紀夫の意見は、次のとおりである。
私は、本件事業計画の決定が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとする多数意見の結論には賛成するが、その理由付けの仕方について多数意見とは考え方を異にする点があるので、その点について意見を述べておくこととしたい。
公権力の行使として行われる行為について抗告訴訟の対象となる行政処分性が肯定されるための最も基本的な要件が、その行為が個人の権利・利益を直接に侵害・制約するような法的効果を持つものといえるか否かの点にあることはいうまでもない。すなわち、問題となる行為が、個人の権利・利益を直接に侵害・制約するような法的効果を持つものである場合には、そのことだけで処分性が肯定されるのが原則とされるものというべきである。

本件で問題とされている土地区画整理事業の事業計画の決定について見ると、多数意見も指摘するとおり、この事業計画が定められ所定の公告がされると、施行地区内の土地については、許可なしには建築物の建築等を行うことができない等の制約が課せられることになっているのであるから、この事業計画決定が個人の権利・利益を直接に侵害・制約するような法的効果を持つものであることは明らかである。確かに、この建築制限等の効果は、土地区画整理事業の円滑な施行を実現するために法が事業計画に特に付与することとした付随的な効果ともいうべき性質を持つものではある。しかし、この建築制限等の効果が発生すると、施行地区内の土地は自由に建築物の建築を行うことができない土地になってしまい、その所有者には、これを他に売却しようとしても通常の取引の場合のような買い手を見つけることが困難になるという、極めて現実的で深刻な影響が生じることになるのである。

このような効果は、抗告訴訟の方法による救済を認めるに足りるだけの実質を十分に備えたものということができよう。

もっとも、それ自体で個人の権利・利益を制約するような効果を持つ行為についても、その行為の段階でその適否を争わせるのでなしに、これに引き続いて行われることが予定されている後続の行為を待ってその適否を争わせることとすることの方が合目的的であり、個人の利益の救済にとってもそれで支障がないと考えられる場合があり得るところであり、そのような場合には、先行行為についてはその処分性を否定することも許されるものと考えられる。

これを本件の事業計画決定について見ると、例えば施行地区内の土地上に建築物を建築したいと考えている土地所有者の場合には、その建築に対する不許可処分が行われるのを待ってその不許可処分の適否を争わせることで、その建築制限等に伴う不利益に対する救済としては足りるものと考えることも可能であろう。しかし、このように所有地に自己の建築物を建築したいというのではなく、所有地を他に譲渡・売却する際の不利益を排除するためにこの建築制限等の制約の解除を求めている者の場合には、後にその適否を争うことでその目的を達することのできるような後続の行為なるものは考えられない(例えば、土地区画整理事業の進行に伴って後に行われる換地計画等の行為の取消請求が認容されたとしても、それによって当然にこの建築制限等の効果が解消されることとなるものではないし、仮にこの段階で当初の事業計画決定自体が取り消されることとなったとしても、それまでの間継続して被ってきた不利益がさかのぼって解消されることとなるものでもない。)のであり、抗告訴訟の方法でその権利・利益を救済する機会を保障するには、事業計画決定の段階での訴訟を認める以外に方法がないのである。

そうすると、本件で問題とされている土地区画整理事業の事業計画の決定については、それが上記のような建築制限等の法的効果を持つことのみで、その処分性を肯定することが十分に可能であり、また、そのように解することが相当なものと考えられるのである。

多数意見の考え方は、上記のような建築制限等の法的効果についても言及はしているものの、結局は、事業計画の決定がされることによって、施行地区内の宅地所有者等が換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その法的地位に直接的な影響が生ずることになるという点に、本件事業計画決定の処分性を肯定する根拠を求めるものとなっていると解される(このように専ら換地処分による影響を根拠に処分性を肯定しようとする多数意見の考え方からすると、この建築制限等の法的効果への言及が理論的にどのような意味を持つことになるのかは、多数意見の判示からしても必ずしも明らかでないところがある。)。すなわち、そこでは、抗告訴訟の方法による救済を図るべき不利益等の内容としては、専ら土地区画整理事業の本来の目的である換地処分による権利交換という措置によってもたらされる不利益等が考えられているのであって、上記の建築制限等の効果が発生することによって個人の被る不利益は、それ自体を独立して取り上げると抗告訴訟による救済の対象とするには足りないものと考えていることになるのである。

しかし、前記のとおりこの建築制限等によって土地所有者の被る現実の不利益が具体的で深刻な実質を持つものであることからすると、このような考え方には問題があるものというべきであろう。

また、多数意見は、このように専ら換地処分の効果に着目して処分性の有無を考えるに際して、この換地処分の法的効果が現実に発生する前の段階においても、将来発生する法的効果の影響や実効的な権利救済を図る必要性の程度等を考慮して、抗告訴訟の対象となる行政処分性を肯定しようとするものである。しかし、このような考え方に立つと、そこでいわれる法的効果の影響や権利救済の必要性の度合いがどの程度であれば処分性が肯定されることとなるのか、その判断の基準が一義的な明確性を欠くものとなり、視点のいかんによってその判断が区々に分かれるという事態が避けられないこととなろう。現に、本件で問題とされている土地区画整理事業の事業計画決定そのものについて、見方によってはこの多数意見がいうのと同様の判断基準に立ったものとも解される昭和41年2月23日の当審大法廷判決の多数意見では、この段階で抗告訴訟の提起を認めることは妥当でなく、また、その必要もないと判断されていたのに対して、本件の多数意見は、これとは正反対の判断を行うに至っているのである。国民にとっても明確で分かりやすい形で訴訟の門戸を開いていくことによって、行政訴訟による権利救済の実効性を確保するという見地からするなら、処分性の有無の判断基準としても、できるだけ明確で分かりやすいものが望ましいものといえよう。その意味でも、本件事業計画の決定の処分性を肯定する法的根拠としては、多数意見のように不安定な解釈の余地を残すような考え方ではなく、端的に上記の建築制限等という法的効果の発生という一事で足りるものとする考え方の方が簡明であり、相当なものというべきであろう。

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

・市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。


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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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