刑法

【重要判例】おれ帰る事件 - 犯行中に突然、犯人の一人が帰宅!?

1. 事件の概要

2. 争点/論点

被害者の死の原因が、被告人が帰る前に被告人とAがこもごも加えた暴行にようて生じたものか、その後のAによる暴行により生じたものかは断定できないが、被告人に傷害致死の罪責を負わせることが出来るのか。

3. 条文

条文

刑法60条
・二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

4. 最高裁決定

弁護人田中清治の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でなく、その余は、事実誤認の主張であり、被告人本人の上告趣意は、事実誤認の主張であり、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 所論にかんがみ、職権により判断する。

4.1. 事実の要旨

 一 傷害致死の点について、原判決(原判決の是認する一審判決の一部を含む。)が認定した事実の要旨は次のとおりである。

(1)被告人は、一審相被告人のAの舎弟分であるが、両名は、昭和61年1月23日深夜スナックで一緒に飲んでいた本件被害者のBの酒癖が悪く、再三たしなめたのに、逆に反抗的な態度を示したことに憤慨し、同人に謝らせるべく、車でA方に連行した。

(2)被告人は、Aとともに、一階八畳間において、Bの態度などを難詰し、謝ることを強く促したが、同人が頑としてこれに応じないで反抗的な態度をとり続けたことに激昂し、その身体に対して暴行を加える意思Aと相通じた上、翌24日午前3時30分ころから約1時間ないし1時間半にわたり、竹刀や木刀でこもごも同人の顔面、背部等を多数回殴打するなどの暴行を加えた。

 ※難詰(なんきつ):非難してなじること。するどく問いつめること。

(3)被告人は、同日午前5時過ぎころ、A方を立ち去ったが、その際「おれ帰る」といっただけで、自分としてはBに対しこれ以上制裁を加えることを止めるという趣旨のことを告げず、Aに対しても、以後はBに暴行を加えることを止めるよう求めたり、あるいは同人を寝かせてやってほしいとか、病院に連れていってほしいなどと頼んだりせずに、現場をそのままにして立ち去った。

(4)その後ほどなくして、Aは、Bの言動に再び激昂して、「まだシメ足りないか」と怒鳴って右8畳間においてその顔を木刀で突くなどの暴行を加えた。

(5)Bは、そのころから同日午後1時ころまでの間に、A方において甲状軟骨左上角骨折に基づく頸部圧迫等により窒息死したが、右の死の結果が被告人が帰る前に被告人とAがこもごも加えた暴行にようて生じたものか、その後のAによる前記暴行により生じたものかは断定できない

4.2. 被告人が傷害致死の責を負うのか

 二 右事実関係に照らすと、被告人が帰った時点では、Aにおいてなお制裁を加えるおそれが消滅していなかったのに、被告人において格別これを防止する措置を講ずることなく、成り行きに任せて現場を去ったに過ぎないのであるから、Aとの間の当初の共犯関係が右の時点で解消したということはできず、その後のAの暴行も右の共謀に基づくものと認めるのが相当である。そうすると、原判決がこれと同旨の判断に立ち、かりにBの死の結果が被告人が帰った後にAが加えた暴行によって生じていたとしても、被告人は傷害致死の責を負うとしたのは、正当である。

 よって、刑訴法414条、386条1項3号、181条1項本文、刑法21条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

・「おれ帰る」と告げてその場から立ち去っただけでは共犯関係が解消したということは出来ず、その後の共犯者の行動に基づく罪責をも負う。


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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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