行政法

【重要判例】東京都ごみ焼却場事件 - 反対する近隣住民らと行政庁の争い

1. 事件の概要

昭和14年頃、東京都が大田区内にごみ焼却場を設置するために土地を買収した。

昭和32年5月、東京都都議会にてごみ焼却場設置計画案が提出され、同案を可決

その後、東京都と建設会社との間でごみ焼却場の建設請負契約を締結したところ、近隣住民らが本件ごみ焼却場の設置場所の選定が、環境衛生上最も不適当な土地になされていて清掃法6条に違反し、煤煙・悪臭などによって保健衛生上重大な脅威を受け、かつ経済上多大の損失を被るとして、都によるごみ焼却場設置の一連の行為の無効を求める抗告訴訟を提起した。

2. 争点/論点

本件ごみ焼却場の設置行為が、行政訴訟の対象となる行政処分に該当するのか。
⇒原審で、本件ごみ焼却場の設置行為は行政庁の処分に該当せず行政訴訟の対象とならないから、その無効確認を求める訴訟は不適法な訴えであるとされた。

3. 条文

条文

行政事件訴訟特例法 第1条
行政庁の違法な処分の取消又は変更に係る訴訟その他公法上の権利関係に関する訴訟については、この法律によるの外、民事訴訟法の定めるところによる。

4. 最高裁判決

論旨は、原審が行政訴訟の対象たる行為を行政庁の公権力の行使としてなされたものに限られ、本件ごみ焼却場設置行為はこれに該当しないと判断したことが、新憲法下における法治主義の法理に違反する、という。

 しかし、行政事件訴訟特例法一条にいう行政庁の処分とは、所論のごとく行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものであることは、当裁判所の判例とするところである。

そして、かかる行政庁の行為は、公共の福祉の維持、増進のために、法の内容を実現すること目的とし、正当の権限ある行政庁により、法に準拠してなされるもので、社会公共の福祉に極めて関係の深い事柄であるから、法律は、行政庁の右のような行為の特殊性に鑑み、一方このような行政目的を可及的速かに達成せしめる必要性と、他方これによって権利、利益を侵害された者の法律上の救済を図ることの必要性とを勘案して、行政庁の右のような行為は仮りに違法なものであっても、それが正当な権限を有する機関により取り消されるまでは、一応適法性の推定を受け有効として取り扱われるものであることを認め、これによって権利、利益を侵害された者の救済については、通常の民事訴訟の方法によることなく、特別の規定によるべきこととしたのである。

従ってまた、行政庁の行為によって権利、利益を侵害された者が、右行為を当然無効と主張し、行政事件訴訟特例法によって救済を求め得るには、当該行為が前叙のごとき性質を有し、その無効が正当な権限のある機関により確認されるまでは事実上有効なものとして取り扱われている場合でなければならない。

 ところで、原判決の確定した事実によれば、本件ごみ焼却場は、被上告人都がさきに私人から買収した都所有の土地の上に、私人との間に対等の立場に立って締結した私法上の契約により設置されたものであるというのであり、原判決が被上告人都において本件ごみ焼却場の設置を計画し、その計画案を都議会に提出した行為は被上告人都自身の内部的手続行為に止まると解するのが相当であるとした判断は、是認できる

 それ故、仮りに右設置行為によって上告人らが所論のごとき不利益を被ることがあるとしても、右設置行為は、被上告人都が公権力の行使により直接上告人らの権利義務を形成し、またはその範囲を確定することを法律上認められている場合に該当するものということを得ず、原判決がこれをもって行政事件訴訟特例法にいう「行政庁の処分」にあたらないからその無効確認を求める上告人らの本訴請求を不適法であるとしたことは、結局正当である。

 されば、原判決には所論の違法はなく、論旨は、採用できない。

 よって、民訴401条、95条、89条、93条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

行政事件訴訟特例法一条にいう行政庁の処分とは、行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。


この記事が良いと思ったら以下のリンクからサイト運営費用の寄付をお願いします。

LegaLabへ寄付する

  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

-行政法
-,