憲法

【重要判例】東京都売春取締条例事件

1. 事件の概要

東京都売春取締条例に違反したとして罰金刑に処せられた被告人が、他の地域には条例で売春を取り締まっていない箇所が存在するため、都道府県毎に異なる取締規定を設ける措置は憲法14条1項に違反すると主張し争った。

2. 争点/論点

・東京都の条例で売春を取締しているが、他地域では取締をしていない地域もある。左記の差が憲法14条1項に違反するのか?

3. 条文

条文

憲法14条1項
・すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

憲法94条
・地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

4. 最高裁判決

社会生活の法的規律は通常、全国にわたり劃一的な効力をもつ法律によってなされているけれども、中には各地方の特殊性に応じその実情に即して規律するためにこれを各地方公共団体の自治に委ねる方が一層合目的的なものもあり、またときにはいずれの方法によって規律しても差支えないものもある

これすなわち憲法94条が、地方公共団体は「法律の範囲内で条例を制定することができる」と定めている所以である。

地方自治法は、憲法のこの規定に基き、普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、その事務に関し、条例を制定することができる旨を規定し(同法14条1項)、その事務として、「地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること」(同法2条3項1号)や「風俗又は清潔を汚す行為の制限その他の保健衛生、風俗のじゆん化に関する事項を処理すること」(同条同項7号)等を例示している。

そして条例中には、法令に特別の定があるものを除く外、「条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、10万円以下の罰金、拘留、科料又は没収の刑を科する旨の規定を設けることができる」(同法14条5項)としているのである。

本件東京都売春等取締条例は前記憲法94条並に地方自治法の諸条規に基いて制定されたものである。

論旨は、売春取締に関する罰則を条例で定めては、地域によって取扱に差別を生ずるが故に、憲法の掲げる平等の原則に反するとの趣旨を主張するものと解される。

しかし憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである

それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあっても、所論のように地域差の故をもって違憲ということはできない。論旨は理由がない。

補足意見

下飯坂潤夫裁判官および奥野健一裁判官の補足意見

多数意見は「しかし憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあっても、所論のように地域差の故をもって違憲ということはできない。」と判示している。

しかし、憲法94条は「地方公共団体は……法律の範囲内で条例を制定することができる」と規定し、条例制定権は、法律の範囲内で許されることを規定している以上、法律の上位にある憲法の諸原則の支配をも受けるものと解すべきことは当然であって、各公共団体の制定した条例も、憲法14条の「法の下に平等の原則」に違反することは許されないものと解する。

すなわち、憲法が自ら公共団体に条例制定権を認めているからといって、その各条例相互の内容の差異が、憲法14条の原則を破るような結果を生じたときは、やはり違憲問題を生ずるものというべきであって、例えば、同種の行為について一地域では外国人のみを処罰したり、他の地域では外国人のみにつき処罰を免除するが如き各条例は、特段の合理的根拠のない限り、憲法14条に反することになろう。

これを要するに、憲法が各地方公共団体に、条例制定権を認めているからといって、当然に、各条例相互間に憲法14条の原則を破る結果を生ずることまでも、憲法が是認しているものと解すべきではなく、各条例が各地域の特殊な地方の実情その他の合理的根拠に基いて制定され、その結果生じた各条例相互間の差異が、合理的なものとして是認せられて始めて、合憲と判断すべきものと考える。

多数意見が「憲法が各地方公共団体に条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところである」として、無条件に地域的差別取扱を合憲とする趣旨であるとするならば、私どもの遽に賛同し得ないところである。

また、弁護人主張の如く売春取締に関する法制は、必ず法律によって全国一律に、統一的に規律しなければ憲法14条に反するとする所論も採るを得ない。

すなわち、全国的に統一した法律の制定されていない時期においては、各地方公共団体が憲法九四条、地方自治法に基き各公共団体が売春取締に関する条例を制定すること自体は、何ら違憲ということはできない。(ただ、各地方公共団体の制定した条例相互の内容の差異が、憲法14条に反する結果を生じたとき始めて違憲の問題が生ずるに過ぎないのであって、上告人は地域について具体的に差異の生じたことについて何ら主張がないのである)

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

・憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることである。

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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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