憲法

【重要判例】丸刈り校則事件

1. 事件の概要

昭和56年4月に熊本県玉名郡玉東町立玉東中学校に入学した生徒および生徒の親権者である父母が、

男子の髪型について「丸刈、長髪禁止」と規定した校則憲法14条および21条に違反するものであり、

また当該校則の制定校長の裁量を逸脱するとして、玉東町および校長を相手に訴えを起こした。

2. 争点/論点

・中学校の校則で男子の髪型について丸刈(長髪禁止)の規定を置くのは憲法に違反するのか?

・丸刈校則の制定は校長裁量を逸脱するものであるのか?

3. 条文

条文

憲法14条
・すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

憲法21条
・集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

4. 最高裁判決

4.1. 丸刈り校則は憲法14条に違反するのか

原告らは、原告aは、校区制のため本件中学に通学したが、通学可能な地域に丸刈を強制していない中学校が三校存在するから、原告aは、住居地により差別的取扱いを受けていると主張するが、服装規定等校則は中学校において独自に判断して定められるべきものであるから、それにより差別的取扱いを受けたとしても、合理的な差別であって、憲法14条に違反しない

次に原告らは、本件校則は、髪の長さについて女子生徒と、男子生徒とで異なる規定をおいているから、性別による差別であると主張するが、男性女性とでは髪形について異なる慣習があり、いわゆる坊主刈については、男子にのみその習慣があることは公知の事実であるから、髪形につき男子生徒と女子生徒で異なる規定をおいたとしても、合理的な差別であって、憲法14条には違反しない

4.2. 丸刈り校則は憲法21条に違反するのか

原告らは、本件校則は、個人の感性、美的感覚あるいは思想の表現である髪形の自由を侵害するものであるから憲法21条に違反すると主張するが、髪形が思想等の表現であるとは特殊な場合を除き、見ることはできず、特に中学生において髪形が思想等の表現であると見られる場合は極めて希有であるから、本件校則は、憲法21条に違反しない

4.3. 丸刈り校則は裁量の範囲を逸脱した違法な校則であるのか

中学校長は、教育の実現のため、生徒を規律する校則を定める包括的な権能を有するが、教育は人格の完成をめざす(教育基本法第1条)ものであるから、右校則の中には、教科の学習に関するものだけでなく、生徒の服装等いわば生徒のしつけに関するものも含まれる。

もっとも、中学校長の有する右権能は無制限なものではありえず、中学校における教育に関連し、かつ、その内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲においてのみ是認されるものであるが 具体的に生徒の服装等にいかなる程度 方法の規制を加えることが適切であるかは 、 それが教育上の措置に関するものであるだけに、必ずしも画一的に決することはできず、実際に教育を担当する者、最終的には中学校長の専門的、技術的な判断に委ねられるべきものである。

従って、生徒の服装等について規律する校則が中学校における教育に関連して定められたもの、すなわち、教育を目的として定められたものである場合には、その内容が著しく不合理でない限り、右校則は違法とはならないというべきである。

そこでまず本件校則の制定目的についてみると、証人hの証言及び被告校長本人尋問の結果によれば、本件校則は、生徒の生活指導の一つとして、生徒の非行化を防止すること中学生らしさを保たせ周囲の人々との人間関係を円滑にすること質実剛健の気風を養うこと清潔さを保たせることスポーツをする上での便宜をはかること等の目的の他、髪の手入れに時間をかけ遅刻する、授業中に櫛を使い授業に集中しなくなる、帽子をかぶらなくなる、自転車通学に必要なヘルメツトを着用しなくなる、あるいは、整髪料等の使用によって教室内に異臭が漂うようになるといった弊害を除却することを目的として制定されたものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。

してみると、被告校長は、本件校則を教育目的で制定したものと認めうる

次に、本件校則の内容が著しく不合理であるか否かを検討する。確かに、原告ら主張のとおり、丸刈が、現代においてもっとも中学生にふさわしい髪形であるという社会的合意があるとはいえずスポーツをするのに最適ともいえず、又、丸刈にしたからといって清潔が保てるというわけでもなく髪形に関する規制を一切しないこととすると当然に被告町の主張する本件校則を制定する目的となった種々の弊害が生じると言いうる合理的な根拠は乏しく、又、頭髪を規制することによって直ちに生徒の非行が防止されると断定することもできない

更に弁論の全趣旨により真正に作成されたと認められる乙第五号証、証人iの証言および原告b本人尋問の結果によれば、熊本県内の公立中学校209校中長髪を許可しているのは32校であるが、これを熊本市内に限ってみると26校中21校長髪を許可しており、本件中学に隣接し、かつて本件中学の教頭であった証人hが現に教頭として勤務している中学校においても長髪が許可されていること、最近長髪を禁止するに至った学校が数校あるが、全体の傾向としては長髪を許可する学校が増えつつあることが認められる。

してみると、本件校則の合理性については疑いを差し挾む余地のあることは否定できない。

しかしながら、本件校則の定めるいわゆる丸刈は、前示認定のとおり時代の趨勢に従い特に都市部では除々に姿を消しつつあるとはいえ、今なお男子児童生徒の髪形の一つとして社会的に承認され、特に郡部においては広く行われているもので、必らずしも特異な髪形とは言えないことは公知の事実であり、前出乙第三号証、証人hの証言及び被告校長本人尋問の結果によれば、本件中学において昭和40年の創立以来の慣行として行われてきた男子丸刈について昭和56年4月9日に至り初めて校則という形で定めたものであること、本件校則には、本件校則に従わない場合の措置については何らの定めもなく、かつ、被告校長らは本件校則の運用にあたり、身体的欠陥等があって長髪を許可する必要があると認められる者に対してはこれを許可し、それ以外の者が違反した場合は、校則を守るよう繰り返し指導し、あくまでも指導に応じない場合は懲戒処分として訓告の措置をとることとしており、たとえ指導に従わなかったとしてもバリカン等で強制的に丸刈にしてしまうとか、内申書の記載や学級委員の任命留保あるいはクラブ活動参加の制限といった措置を予定していないこと、被告中学の教職員会議においても男子丸刈を維持していくことが確認されていることが認められ、他に右認定に反する証拠はなく、又、弁論の全趣旨によれば現に唯一人の校則違反者である原告aに対しても処分はもとより直接の指導すら行われていないことが認められる 右に認定した丸刈の社会的許容性や本件校則の運用に照らすと 、丸刈を定めた本件校則の内容が著しく不合理であると断定することはできないというべきである。

以上認定したところによれば、本件校則はその教育上の効果については多分に疑問の余地があるというべきであるが、著しく不合理であることが明らかであると断ずることはできないから、被告校長が本件校則を制定・公布したこと自体違法とは言えない。

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

・生徒の服装等について規律する校則が、教育を目的として定められたものである場合には、その内容が著しく不合理でない限り、違法とはならない。

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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 離婚問題・不貞慰謝料問題を中心に活動しております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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