憲法

【重要判例】京都府学連事件

1. 事件の概要

1962年6月21日に京都府学生自治会連合の主宰によりデモ行進が行われたがデモ行進の途中で、事前に許可を得た際の「行進隊列は4列縦隊とする」および「車道の東側端を進行する」という条件に違反したため、当該状況を警察官が撮影したところ、学生は憤慨し撮影を行った警察官に傷害を負わせ公務執行妨害罪および傷害罪で起訴された。
学生側は警察官が許可なく個人を撮影することは憲法13条に違反するため適法な公務執行ではない為公務執行妨害罪は成立しないと主張した。

2. 争点/論点

・警察官による個人の容貌の撮影は憲法13条に違反するのか?

3. 条文

条文

憲法13条
・すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

4. 最高裁判決

憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているのであって、これは、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。

そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するものというべきである。

これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。

しかしながら、個人の有する右自由も、国家権力の行使から無制限に保護されるわけでなく、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである

要約

・何人も承諾なしに、みだりにその容貌・容態を撮影されない自由を有する。ただし当該自由の保障は絶対的なものではなく、公共の福祉のために相当の制限を受けることがある。

そして、犯罪を捜査することは、公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の1つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるのであるから(警察法2条1項参照)、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうるものといわなければならない。

そこで、その許容される限度について考察すると、身体の拘束を受けている被疑者の写真撮影を規定した刑訴法218条2項のような場合のほか、次のような場合には、撮影される本人の同意がなく、また裁判官の令状がなくても、警察官による個人の容ぼう等の撮影が許容されるものと解すべきである。

すなわち、現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であって、しかも証拠保全の必要性および緊急性がありかつその撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもって行なわれるときである。

このような場合に行なわれる警察官による写真撮影は、その対象の中に、犯人の容ぼう等のほか、犯人の身辺または被写体とされた物件の近くにいたためこれを除外できない状況にある第三者である個人の容ぼう等を含むことになっても、憲法13条、35条に違反しないものと解すべきである。

要約

以下の条件がそろえば、裁判官の令状が無くても警察官による個人の容貌の撮影が許可される。

  • 条件1:現に犯行が行われ、もしくは行われたのち間がない
  • 条件2:証拠保全の必要性および緊急性がある
  • 条件3:撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法である

これを本件についてみると、原判決およびその維持した第一審判決の認定するところによれば、昭和37年6月21日に行なわれた本件A主催の集団行進集団示威運動においては、被告人の属するB学生集団はその先頭集団となり、被告人はその列外最先頭に立って行進していたが、右集団は京都市a区b町c下る約30メートルの地点において、先頭より4列ないし5列目位まで7名ないし8名位の縦隊で道路のほぼ中央あたりを行進していたこと、そして、この状況は、京都府公安委員会が付した「行進隊列は4列縦隊とする」という許可条件および京都府中立売警察署長が道路交通法77条に基づいて付した「車道の東側端を進行する」という条件外形的に違反する状況であったこと、そこで、許可条件違反等の違法状況の視察、採証の職務に従事していた京都府山科警察署勤務の巡査Dは、この状況を現認して、許可条件違反の事実ありと判断し違法な行進の状態および違反者を確認するため、Eの東側歩道上から前記被告人の属する集団の先頭部分の行進状況を撮影したというのであり、その方法も、行進者に特別な受忍義務を負わせるようなものではなかったというのである。

右事実によれば、D巡査の右写真撮影は、現に犯罪が行なわれていると認められる場合になされたものてあって、しかも多数の者が参加し刻々と状況が変化する集団行動の性質からいって、証拠保全の必要性および緊急性が認められ、その方法も一般的に許容される限度をこえない相当なものであったと認められるから、たとえそれが被告人ら集団行進者の同意もなく、その意思に反して行なわれたとしても、適法な職務執行行為であったといわなければならない。

そうすると、これを刑法95条1項によって保護されるべき職務行為にあたるとした第一審判決およびこれを是認した原判決の判断には、所論のように、憲法13条、35条に違反する点は認められないから、論旨は理由がない。

要約

本件では警察官による個人の撮影の状況が上記条件1~条件3の3条件を全て満たしており、憲法13条および35条に違反するものではない。

5. ポイントとなる事項

ここがポイント

・何人も承諾なしに、みだりにその容貌・容態を撮影されない自由を有する。ただし当該自由の保障は絶対的なものではなく、公共の福祉のために相当の制限を受けることがある。

以下の条件がそろえば、裁判官の令状が無くても警察官による個人の容貌の撮影が許可される。

  • 条件1:現に犯行が行われ、もしくは行われたのち間がない
  • 条件2:証拠保全の必要性および緊急性がある
  • 条件3:撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法である
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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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