憲法

【重要判例】吉祥寺駅構内ビラ配布事件

1.事件の概要

被告人は吉祥寺駅構内において、他の数名と共に、同駅係員の許諾を受けないで乗降客らに対しビラ多数枚を配布して演説等を繰り返したうえ、同駅の管理者からの退去要求を無視して約20分間にわたり同駅構内に滞留した。

鉄道営業法35条及び、刑法130条後段の罪で起訴された。

2.争点/論点

・駅構内でのビラ配りを処罰することは、憲法21条1項に違反しないのか?

3.条文

条文

憲法21条1項
・集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

4.最高裁判決

憲法21条1項は、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の財産権、管理権を不当に害するごときものは許されない。

鉄道営業法35条及び刑法130条後段の各規定を適用し、本件を処罰しても憲法21条1項に違反するものでない。

補足意見

伊藤正己裁判官の補足意見抜粋 ~ パブリックフォーラムについて ~

ある主張や意見を社会に伝達する自由を保障する場合に、その表現の場を確保することが重要な意味をもっている。
特に表現の自由の行使が行動を伴うときには表現のための物理的な場所が必要となってくる。この場所が提供されないときには、多くの意見は受け手に伝達することができないといってもよい。

一般公衆が自由に出入りできる場所は、それぞれその本来の利用目的を備えているが、それは同時に、表現のための場として役立つことが少なくない。
道路、公園、広場などは、その例である。これを「パブリック・フオーラム」と呼ぶことができよう。

このパブリック・フオーラムが表現の場所として用いられるときには、所有権や、本来の利用目的のための管理権に基づく制約を受けざるをえないとしても、その機能にかんがみ、表現の自由の保障を可能な限り配慮する必要があると考えられる。

道路における集団行進についての道路交通法による規制について、警察署長は、集団行進が行われることにより一般交通の用に供せられるべき道路の機能を著しく害するものと認められ、また、条件を付することによってもかかる事態の発生を阻止するとができないと予測される場合に限って、許可を拒むことができるとされるのも、道路のもつパブリック・フオーラムたる性質を重視するものと考えられる。

もとより、道路のような公共用物と、一般公衆が自由に出入りすることのできる場所とはいえ、私的な所有権、管理権に服するところとは、性質に差異があり、同一に論ずることはできない。しかし、後者にあっても、パブリック・フオーラムたる性質を帯有するときには、表現の自由の保障を無視することができないのであり、その場合には、それぞれの具体的状況に応じて、表現の自由と所有権、管理権とをどのように調整するかを判断すべきこととなり、前述の較量の結果、表現行為を規制することが表現の自由の保障に照らして是認できないとされる場合がありうるのである。

5.ポイントとなる事項

ここがポイント

・憲法21条1項の表現の自由は絶対無制限を保障するものではない。

・道路、公園、広場などのパブリックフォーラムは表現の場所として重要な機能を果たす。そのため、その場所の所有権及び管理権と表現の自由をどのように調整すべきかはそれぞれの具体的状況に応じて比較衡量をし、検討する。場合によっては、その場所で表現行為の規制をすることが是認されない場合もありうる。


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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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