刑法

【重要判例】高速道路侵入事故死事件

1.事件の概要

被告人被害者に対し、深夜の公園2時間以上にわたり間断なく極めて激しい暴行を繰り返し、引き続き、マンション居室において約45分間断続的に同様の暴行を加えた。

被害者は隙を見てマンション居室から逃走したが、被告人らに対し極度の恐怖感を抱き、被告人らによる追跡から逃れるため、マンションから約800m離れた高速道路に侵入し、疾走してきた自動車に衝突され、後続の自動車にれき過されて、死亡した。

2.争点/論点

・被害者が高速道路に侵入し自動車にれき過されて死亡した結果と被告人らの暴行に因果関係が認められるのか?

3.条文

条文

刑法第205条
・身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

4.最高裁判決

被告人Aの弁護人及川信夫の上告趣意は、量刑不当の主張であり、被告人Bの弁護人滝谷滉の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であり、被告人Cの弁護人金沢裕幸の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、被告人Dの弁護人西嶋勝彦の上告趣意は、違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 なお、所論にかんがみ、職権により判断する。
  原判決の認定によると、本件の事実関係は、次のとおりである。

 (1) 被告人4名は、他の2名と共謀の上、被害者に対し、公園において、深夜約2時間10分にわたり、間断なく極めて激しい暴行を繰り返し、引き続き、マンション居室において、約45分間、断続的に同様の暴行を加えた。

 (2) 被害者は、すきをみて、上記マンション居室から靴下履きのまま逃走したが、被告人らに対し極度の恐怖感を抱き、逃走を開始してから約10分後、被告人らによる追跡から逃れるため、上記マンションから約763mないし約810m離れた高速道路に進入し、疾走してきた自動車に衝突され、後続の自動車にれき過されて、死亡した。

  【要旨】以上の事実関係の下においては、被害者逃走しようとして高速道路に進入したことは、それ自体極めて危険な行為であるというほかないが、被害者は、被告人らから長時間激しくかつ執ような暴行を受け、被告人らに対し極度の恐怖感を抱き、必死に逃走を図る過程で、とっさにそのような行動を選択したものと認められ、その行動が、被告人らの暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえない。

そうすると、被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人ら暴行に起因するものと評価することができるから、被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係を肯定した原判決は、正当として是認することができる。

よって、刑訴法414条、386条1項3号、181条1項ただし書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

5.ポイントとなる事項

ここがポイント

・被害者の死の結果は被告人らの暴行から直接発生しているものではないが、被告人らの激しい暴行により極度の恐怖感を抱き、冷静な判断が出来ない状況で被告人らから逃走するために高速道路に侵入するという行為を選択している。
⇒高速道路に侵入するという行為は被告人らが誘発したものと評価でき、被告人らの暴行と被害者の死の結果に因果関係が認められる

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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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