刑法

【重要判例】脳梅毒事件

1.事件の概要

被告人が、被害者の左目を右足で蹴ったところ、被害者の左目の角膜に直径0.5cmの鮮紅色の内出血が生じた。
傷自体は致命的なものではないが、被害者は脳梅毒にかかっており脳に高度の病変があったため、被告人の暴行により脳の組織が一定程度崩壊し、その結果死亡した。

被告人は傷害致死罪で起訴されたところ、被告人の暴行行為被害者の死の結果との因果関係の存否が争点となった。

2.争点/論点

・被害者の特殊事情により生じた死の結果について、暴行行為との因果関係が認められるのか?

3.条文

条文

刑法第205条
・身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

4.最高裁判決

被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったらば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしても、その行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができる。

補足説明

刑法における因果関係の検討の際には、実行行為と結果に「あれなければこれなし」の条件関係が成立するかで判断する。

今回の事例の場合は、被告人の暴力行為(あれ)がなければ、脳梅毒との特殊事情と相まって死亡するという結果がないこと(これなし)が認められるため、暴力行為と死の結果に因果関係が認められるという結論となる。

5.ポイントとなる事項

ここがポイント

・被害者の特殊事情を被告人が知らず、予想できなかったとしても、暴行行為が特殊事情と相まって致死の結果を発生させたため、傷害致死罪が成立する。

・刑法における因果関係野検討は、実行行為と結果に「あれなければこれなし」の条件関係が成立するかで判断する。

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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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