憲法

【重要判例】堀越事件

1.事件の概要

社会保険事務所の職員(国家公務員)であったXは、勤務時間外である休日に、職場とは無関係の場所で公務員としての地位を利用することなく、日本共産党を支持する目的でビラを配布したところ、国家公務員の政治的行為を禁止する国家公務員法及び人事院規則に違反するとして起訴された。

2.争点/論点

公務員が政党のビラ配りをしている

・国家公務員の政治的行為を一律禁止することは憲法に違反しないのか?
 猿払事件の場合は公務員が組織する労働組合の活動であったが、本件では個人の活動が対象
  国家公務員の政治活動の自由を規制する根拠である行政の中立的運営の確保と国民の信頼が害されるとは言いづらい状況

参考判例

3.条文

条文

憲法21条1項
・集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

4.最高裁判決

禁止の対象となる政治的行為は、国家公務員法の委任を受けて制定された人事院規則の定める政治的行為の行為類型に文言上該当する行為であり、かつ公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものをいう。(構成要件の解釈)

本件処罰規定に対する違憲審査の判断枠組み

政治的行為に対する規制が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかは、本件処罰規定の目的のために規制が必要とされる程度と、規制される自由の内容および性質、具体的な規制の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである。

本件処罰規定の違憲審査

本件処罰規定の目的は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することにあって、行政の中立的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持することにあるところ、これは、議会制民主主義に基づく統治機構の仕組みを定める憲法の要請にかなう国民全体の重要な利益と言うべきであり、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なう恐れが実質的に認められる政治的行為を禁止することは、国民全体の重要名利益の保護のためであった、その規制の目的は合理的であり正当

また、本件処罰規定により禁止されるのは、民主主義社会において重要な意義を有する表現の自由としての政治活動の自由ではあるものの、禁止の対象とされるものは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られ、このようなおそれが認められない政治的行為や本規則が規定する行為類型以外の政治的行為が禁止されるものではないから、その制限は必要やむを得ない限度にとどまり、前記の目的を達成するために必要かつ合理的な範囲と言うべきものであり、本件処罰規定は憲法21条1項に違反せず、合憲。

本件の配布行為に対する評価

本件配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって勤務時間外である休日に、国ないし職場の施設を利用せずに、公務員としての地位を利用することなく職務と全く無関係に公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識しうる態様で行われたものでもないから、公務員の職務遂行の政治的中立性を損なう恐れが実質的に認められるものとは言えない。

したがって、本件配布行為は本件処罰規定の構成要件に該当しない為、被告人は無罪。

5.ポイントとなる事項

ここがポイント

・禁止対象となる政治的行為は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが認められるものでなければならない。
 本件行為は外観からは公務員による行為と認識できないものであり、公務員の職務遂行の中立性を損なうものではなく、被告人は無罪。


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  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

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