憲法

【重要判例】猿払事件

1.事件の概要

北海道猿払(さるふつ)村の郵便局に勤務していた郵便局員(当時は公務員)のXが、衆議院議員選挙に際し、猿払地区労働組合協議会の決定に従い、勤務時間外に国の施設を利用することなく、特定の政党を支持する目的で、選挙用のポスターを公営掲示板に自ら掲示したり、他人に配布したりさせたところ、国家公務員の政治的行為を禁止する国家公務員法(102条1項)および人事院規則に違反するとして起訴された。

2.争点/論点

郵便局員が選挙用のポスターを掲示する

・国家公務員の政治的行為を一律禁止することは憲法に違反しないのか?

3.条文

条文

憲法21条1項
・集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

4.最高裁判決

公務員の政治活動の自由は憲法21条項で保障されているが、行政の中立的運営が確保され、これに対する国民の信頼が維持されることは、憲法の要請にかなうものであり、公務員の政治中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益に他ならず、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治活動を禁止することは、それが合理的で必要やむを得ない限度にとどまる限り、憲法の許容するところである。(規範)

国家公務員法102条1項による公務員に対する政治的行為の禁止が合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものであるかの判断には、
①禁止の目的
②目的と禁止される政治的行為との関連性
③政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡
の3点から検討することを示した。(猿払基準)

①と②に対する評価
行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある政治的行為を禁止することは国民全体の共同利益を擁護するための措置にほかならず、その目的は正当であり、禁止と禁止目的との間に合理的な関連性があると判断した。

③に対する評価
また、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行動類型に属する政治的行為を、意見表明そのものの制約をねらいとしてではなく、その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして禁止するときは、同時にそれにより意見表明の自由が制約されることにはなるが、それは、単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約に過ぎず、他面、禁止により得られる利益は、公務員の政治的中立性を維持し、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するという国民全体の共同利益なのであるから、得られる利益は、失われる利益に比してさらに重要なものと言うべきであり、その禁止は利益の均衡を失するものではない

以上から、国家公務員法102条1項の規定は、合理的で必要やむを得ない限度を超えるものとは認められず、憲法21条に反しない。

5.ポイントとなる事項

ここがポイント

■猿払基準
以下の①~③から合憲性を審査する。
 ①禁止の目的
 ②目的と禁止される政治的行為との関連性
 ③政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡

あなたにおすすめ

この記事が良いと思ったら以下のリンクからサイト運営費用の寄付をお願いします。

LegaLabへ寄付する

  • この記事を書いた人

徳山 紗里

弁護士。京都女子大学法学部の卒業生で初の司法試験合格。 幅広い分野で弁護士の活動をしております。 詳細は私個人のホームページを参照ください。

-憲法
-